人づくりちょっといい話5

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ページID1018521  更新日 2023年1月11日

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子どもは外で遊んで、汗をかいて、バタンと眠る

5月はハイティーンの犯罪が目立ちました。「どうしてあの子が」と戸惑うことも多いのです。10代の子がキレる問題にいろいろな面から討議をされていますが、共通項のようなものはありません。にもかかわらず、現代の社会はせっかちで、「教育に問題がある」「家庭に問題がある」などと単純な犯人探しをする傾向があります。そうではなく、今回は「もう少し腰を落として落ち着いて考えてみよう」と提案したいと思います。

実は、静岡県が中心となって「人づくり百年の計委員会」をつくり、私もその会長として2年数ヵ月に渡って17人の専門の先生たちと討議を交わし、話合いを進めながら一つの提案書を作りました。その会合の中で、日本体育大学大学院教授の正木健雄先生が「今の子ども、ことにキレやすい子は大脳の前頭葉がよく発達していない」と衝撃的な指摘をされました。

前頭葉はおでこの真ん中くらいにある大脳の部分で、昔からカッとなる事を「頭に血が上る」と言います。その頭に上る血流をダムの水門のように調節できる器官なんですね。

正木先生らは大脳前頭葉の活動の強さの特性がどのように変化しているか10年ごとに調査してこられました。その研究を少し紹介しましょう。

普通の発達の順序は、幼児では「興奮」の働きも「抑制」の働きもともに強くありませんが、小学校に入ると「興奮」の働きが強くなって抑えのきかない子どもが多くなり、高学年になると「抑制」の働きも強くなって両者の働きのバランスが取れ、両者の切り換えもよくなるという「大人」型に発達していくのだそうです。

ところが近年は「興奮」の働きが強くなってくるのがとても遅くなっており、小学校高学年や中学校で最も多くなるというように発達の遅れがみられます。これまではほとんどみられなかったことですが、「興奮」より「抑制」の方が先に強くなる、という発達の歪みもみられます。いつまでたっても発達しないとか、逆戻りして幼稚化するといった発達の停滞もみられると報告されています。つまり、「抑制」も「興奮」も異常なのです。

正木先生は、この変化をくいとめるため、幼児から小学生の時期に、全身を使うような遊びを思い切りさせる熱中体験をいっぱいさせて「興奮」の強さを順調に発達させていくことが課題だとしています。また、多くの子どもにみられる「体温調節機能」の発達不全や「自律神経」の調節不良に対しても、子どもらしく毎日1回汗をかくくらい外で元気に遊び、夜はバタン・キューと早く眠る生活を取り戻すことを提案しています。いかがでしょうか。

草柳大蔵著「午前8時のメッセージ99話」(H21年発行静新新書)より

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