人づくりちょっといい話49

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ページID1018552  更新日 2023年1月11日

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家族の活性化のために

浜崎タマエさんという家庭科の先生が、1997年に「子どもが見つめる『家族の未来』」(農山漁村文化協会)という本をお出しになりました。面白いことに、そのころスーパーとコンビニの売り上げが逆転したんですよ。コンビニの方が家庭に近づいて、今までの大きいスーパーがコンビニに売り負けたときなんです。食事をするのから何から、全部コンビニで買ってきて家族が生活をするようになってくる。そういう状態を便利がってばかりいないで、「朝昼晩と、コンビニのデリカテッセンで買ってきて、チンすればいいだけのお料理を食べている家族って何だろう」と考えるところから、家族を客観視するという授業をやってみたんです。これは非常に面白い記録なんです。

それからもうひと方、吉田カズコさんという方がいらっしゃいます。彼女も「欠損家族の認識」というところから、「今の家族というものは、家族としてはまとまっているんだけれども、あんまり近所づきあいもないし、旅行もしないでいる。社会から非常に縁遠い人間のグループになっているのではないだろうか」と考えたんです。

例えば、あるとき中山間地帯、たくさん木が生えていて、川の水がまだきれいで、そして民家がポツポツとあるのだけれども、おじいちゃんおばあちゃんしか住んでいないというところ、そういう中山間地帯に行ってみて、そういうところに住む人たちはどうやって暮らしているのかと見てみると、まだお風呂を薪で焚いていたり、ご飯をかまどで炊いていたりするんです。「ちょっと食べさせてください。」といって食べてみると、漬物もその家の漬物だし、ご飯もその家のご飯だし、おいしいんですね。「ああ、これが生活だったんだな」とわかる。今の私たちの生活というものは、便利ということだけの生活で、生活を通して家族がお互いにぬくもりを感じ合うとか、「家族であってよかったね」という気持ちの交換があるとか、そういうことをしている暇がないんじゃないか。

こうして家族の客観視というものをやってみる。そうすると、自分たち自身を駄目な家族と考えてみたり、孤独な家族と考えたりしないで、自分たちは一つの生活のタイプを取っているに過ぎないのではないか、ととらえることができる。それではもったいないから、いろいろなところに小さい旅行をしてみよう、あるいは違う環境に暮らしている人を訪ねてみよう、と家族自身が自己モニターを始めるんです。これが実は、家族の活性化につながっていくんですよ。

草柳大蔵著「続・午前8時のメッセージ99話」(平成14年発行)より

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