人づくりちょっといい話12

ツイッターでツイート
フェイスブックでシェア
ラインでシェア

ページID1018537  更新日 2023年1月11日

印刷大きな文字で印刷

「価値のリレー」を子どもの胸に届けて

数学のノーベル賞に当たるフィールズ賞をお取りになった数学者の広中平祐さんは、母を語っています。ハーバード大学の教授をされていて筑波大学の長になられた広中さんのお父さんとお母さんは、いずれも子連れの再婚です。お父さんが3人、お母さんは2人連れて結婚し、その後、お母さんが10人子どもを産んで、子どもが15人になってしまうんです。お母さんはだれの手も借りずに1人で全員をお育てになります。

ある時、広中少年を前にして「この間、占いさんに見てもらったのよ。そしたら占いさんが『あなた大変な子だくさんでしょう?子どもの世話のために随分な苦労をなさってますね。大変ですね。でもご安心なさい。10何人かいらしゃるお子さんの中に、あなたのために一生懸命に働いて、後にあなたか満足するような存在になる子がたった1人いますよ。大変な光をしょった子ですよ』と言ってね」と言いながら、彼の顔をじっと見てニコッと笑うというんです。その時に広中少年は「あっ、僕のことだ」と思うんです。元々勉強が好きだったこともあるのでしょうが「じっと僕を見て『私を幸せにしてくれる人はあなたよ』ということをお母さんは問い掛けてくれたんだ。じゃあ、お母さんを幸せにしよう」と、一生懸命に努力をしてフィールズ賞を取ってしまうんですね。

父の話、母の話というものがこんなに意味があるんですね。とはいうものの、子どもが寝ているうちに出掛けて、帰って来たらまた寝ていたという生活ですから、子どもに接する時、殊にお父さんは、人生の意味なんかを話すよりも「たくさん食べてるかい?」とか「部活の調子はどうなんだい?」といった、子どもがリラックスする話しかしないと思うんです。お母さんは逆に「また成績が下がったのね」とか「今度の部活はどうなの?」といった何か垂直的に情報を落としてしまうことが多い。子どもの目を見て「将来、私を楽にしてくれる子がいるんだってさ」ということを、ほほえみ混じりで話すような気持ちの余裕というものをお持ちにならないんじゃないかと思うんです。

それなんです。夏休みはゆっくりと時間があるのですから、視線のレベルを同じにして話してみてはどうだろうかと思うんですよ。また、父の話、母の話、父の一言、母の一言といった本は公民館にもたくさんありますから、ちょっと暇をみつけて読まれてはいかがでしょう。

それから、お子さんたちの祖父母に当たる、あなた方のお父さんお母さんの思い出がありますね。「私のお父さんはこう言ったのよ」とか「俺はばあちゃんにしょっちゅう怒られたよ」といった、一代前の世の中で、人生を渡っていく上での物差しを教わって自分たちは育ってきたんだという価値のリレーを子どもの胸に届けてみてはどうかと思うんです。

草柳大蔵著「午前8時のメッセージ99話」(H21年発行静新新書)より

このページに関するお問い合わせ

スポーツ・文化観光部総合教育局総合教育課
〒420-8601 静岡市葵区追手町9-6
電話番号:054-221-3304
ファクス番号:054-221-2905
sougouEDU@pref.shizuoka.lg.jp