人づくりちょっといい話4

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ページID1018535  更新日 2023年1月11日

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ステージの上で子どもは花開く

人間とステージの関係について、お話ししたいと思います。ステージというのは「舞台」「立場」「自己表現の場所」とでもいいましょうか。愛媛県今治市の小学校5年生、村瀬ありささんの作文『オオタカのいる森』(「森林交付税促進連盟」募集作文の第1位)を読んで、「父や母、姉といった周囲の人たちが何かの立場を与えたとき、子どもの内側に秘められていた可能性がいっぺんに花開くんだな」と感じたからなんです。作文を紹介しましょう。

木が空と土の両方に根を張って生きていることを教えてくれたのは姉でした。
「ありさ、木ってどこから栄養を取っているのか知っとるで?そりゃあね、土の中から取るやろ。いいや、空からも取っとるんよ。見てみ。あの木の枝の先に付いとる葉っぱの1枚1枚から、木は太陽のエネルギーをもらって生きとるんよ。ほやけんねぇ、木は地面と空の両方に根を張っとるって言えるんや」
私は考えました。それで聞きました。
「それじゃあね、土の中と空とどっちの根の方が大きいの?」
「同じよ。同じ大きさを持っとるんよ。木って本当にすごいやろ?」そして「木は空に向かっては酸素を出して恩返しをし、地面の中ではいろんな生き物を養って地球に恩返しをしている」というのです。「空と土の根っこから栄養をもらっているばかりではくて、ちゃんとお返しもしている」というのです。木に比べたら、人間はどんな恩返しを地球にしているのでしょう。

ありささんの部屋から、彼方の小さな山が一面の緑に見えます。今度はそこへお父さんが連れていってくれます。その山の中には天然記念物のオオタカがすんでいます。

「オオタカは何をたべとるんやろうか?」って聞くと、父は「森が養っている小さな動物を食べとるんよ」と教えてくれました。だから、森がなくなるとオオタカは生きられないのだそうです。「森はいろんな生き物たちを生かす世界なんだよ。オオタカが生きられるのも森の力のお陰なんだ。森の声を聞いてごらん」と父が言うので耳を澄ませると、風の音がゴォッと聞こえてきます。鳥の声も聞こえます。木が揺れる音も聞こえます。
「森の声はね、1つじゃないんだよ。いろんな声が混じってる。いろんな生き物が生きてるからね。生き物が多いってすごいことだね」

森は木があるから森なのではなく、他の生き物たちも生きていられるから森だったと、気が付いたありささんはその時から新しい成長をした。私は前に見た『風の谷のナウシカ』で虫たちが森を守っているという話を思い出しました。みなさんはどうですか。

草柳大蔵著「午前8時のメッセージ99話」(H21年発行静新新書)より

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