人づくりちょっといい話1

ツイッターでツイート
フェイスブックでシェア
ラインでシェア

ページID1018542  更新日 2023年1月11日

印刷大きな文字で印刷

何よりも大切な朝ご飯

時々、心ない若者から「長生きして何かいいことがありますか?」と聞かれることがあるんですよ。いいことがあるんです。70年も生きていますと、大切な話は何回も聞いていることに気付きます。「大切な事柄は時間を超越しているんだ」ということが分かるんですね。

例えば、「お母さんが朝ご飯を子どもにきちんと食べさせることは、子どもの教育の半分以上に大切なものだ」という話があります。私はこの話を、30年前に、神戸にある灘高等学校の校長先生から聞きました。灘高といえば、当時、200人余りの3年生の約半数が東大にストレートで入っていた有数の進学校です。その校長先生に、「生徒さんが浪人もせずにスラスラと、しかもひねくれた子どもも出ないで東大に合格しますね。秘訣は何ですか」と聞いたら、「一つは『精力善用』。体が持っているエネルギーを無駄遣いしないようにするということ。もう一つは、朝、学校へ来る前に、お母さんの作った朝ご飯をきちんと食べて来ること。この二つですよ」と言われたんですよ。「簡単なことですね」と言ったら、「簡単なことがなかなかできないのが現代ではありませんか、草柳さん」と言われてしまった。

十数年ほど経って、山形県の小国町で、キリスト教信者で人格者のご夫婦が、基督(キリスト)教独立学園高等学校という全寮制の高校を主宰していらっしゃるのを取材しました。「先生、この学校で一番大切なことは何ですか?」と聞いたら、「朝、家内が作る朝ご飯です。おいしいご飯を作ってあげれば、生徒たちが残さず全部食べる。そこから生徒たちの学習のエネルギーが出るんですよ」と言われたんですね。「やっぱり、母親、あるいは朝ご飯を作ってくれる人が、心を込めたご飯を作ってくれることが教育の中心なんだな」と思ったんです。

それから2、3年後、お医者さんを相手にした連載を6年間やったことがあります。月刊誌でしたから、6年間で72人のお医者さんに会いました。その中の3人が同じことをおっしゃいました。「朝ご飯をきちんと食べる」と。30分すると消化して、体温が上がり血流が良くなる。大脳に血液が全部集まって、ちょうど家で朝ご飯を食べて学校に行って、第1時限の時間が始まるのが3、40分後。集中して授業を聞けるのが午前中なんですね。胃袋は体の中で一番遅く目が覚めるそうです。大脳が目覚めてから30分必要です。ですから、30分前に起きて、顔を洗い、部屋を整とんして、庭を掃いてといったことを済ませると大体ご飯時になる。ご飯を食べて学校へ行くと、大脳に血液が集まる最高の状態で教室に座れるから、先生のおっしゃることが全部受け取れるということなんですね。

草柳大蔵著「午前8時のメッセージ99話」(H21年発行静新新書)より

このページに関するお問い合わせ

スポーツ・文化観光部総合教育局総合教育課
〒420-8601 静岡市葵区追手町9-6
電話番号:054-221-3304
ファクス番号:054-221-2905
sougouEDU@pref.shizuoka.lg.jp