人づくりちょっといい話52

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ページID1018568  更新日 2023年1月11日

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父親の原形=恐れ・尊敬・対抗・超越

運動会の季節です。子どもの時に秋の青空にドンドーンと花火が上がりますと「あっ、今日は運動会をやるんだ」なんて、朝からドキドキしていたものですね。今の学校はたいてい校庭がコンクリートで固められていますが、昔は地べたですよね。運動会の日に、地べたにむしろを敷いて座って、お母さんが重箱にお弁当を作って来てくれる。だいたい野菜の煮しめや玉子焼きが入っていて、海苔巻きがおいしいすよね。お昼になるとその父兄の席に行ってそれを食べてね。めったに来ない親父が来てるんですね。

これが、うれしいのと恥ずかしいのと怖いのと三つくらいの複雑な心境なんですね。どうしてお父さんというのは、いつでもそういう感じがするのでしょうか。

フロイトという心理学者が、父親はウルファーター(原父)だと言っています。子どもが成長するにつれて、恐れ・尊敬・対抗・超越の対象になる存在だと。

最初はやっぱりお父さんて怖いんですね。いるだけで怖い。その次は「うちのパパすごいな」「大人って偉いな」と尊敬の眼差しを投げる相手、そして子どもが成長してくると「もう親父には負けない。俺だってできる」という対抗心が起き、最後に「親父を越したい」という、この恐れ・尊敬・対抗・超越というのは子どもとしてだれでも持つんですね。それを、「子どもが反抗期に入った」「生意気を言っている」「親に向かて何だ」なんて思ってしまうと断絶が始まるんですよ。「ああ、こいつも成長してきたな」と、そういうふうに見ていくのがお父さんですね。

神宮皇后神社という神宮皇后を奉る神社があります。宮司の宮崎義孝さんという方が亡くなる時に、息子さんと交わしたやりとりがあります。冷たい手を息子の胸の中に入れて「俺はもうお前と長いこと話ができない。お前に三つ言い聞かせることがある。第一は俺が死んでも神様が必ず見守ってくれる。第二は村の方々がお前を励まし助けてくれる。それに答えるんだよ。第三は、死んで体がなくなっても俺の心はお前のここに住み着くよ」と言って、冷たい手を伸ばして息子の胸元をトントンとたたきます。「だから寂しがるんじゃないよ。父はここにいるからな」。そう言って間もなく亡くなったという話です。

黙って亡くなっていく父親もいるでしょうが、ことばに出しいないだけの話であって、やはり家族の平安を願い、みんなにありがとうという感謝をし「俺はいつまでもお前たちを守ってるぞ」という気持ちを持っているのではないかなという感じがするんですね。これがやっぱり父親の原形みたいな感じを私は持つんです。

草柳大蔵著「午前8時のメッセージ99話」(平成13年発行)より

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