人づくりちょっといい話28

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ページID1018541  更新日 2023年1月11日

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踏み込んで引っ張り出す教育

今、静岡県では公立学校の教職員や教委関係者、教員OBが核となって、「地域の青少年声掛け運動」が実施されています。この運動は「美しい未来のために」と題された青少年健全育成主要プロジェクトとして始められたもので、「美しい未来のために」、健やかな子どもたちを育てるために、具体的なプランとして声を掛けあおうというんですね。

考えてみると、これは大変なことです。最初のうちはお互いに恥ずかしがって、殊に声をかけられた方は、「うるさいな」とか「余計なお世話」とすねてみせると思うんですよ。でも、そう言われようが言われまいが、声を掛けるということは相手の心を開くこと、必ず分かってくれることだという自信をもって、繰り返し繰り返しみんなで行うことによって、声を掛けずに済むような子どもたちが必ず増えていくと思います。

実践が伴わなくては教育ではありません。教壇と机があるところだけが教育の場ではないのです。生きていくこと自身が教育なんですね。鳥や花から教わることもあります。しかし最も近いのは、お父さんお母さんから教わることであり、隣のおじさんおばさんから教わることであり、見ず知らずの人でも自分に声を掛けてくれた人から教わった言葉、それも私は教育なんだと思うんです。

「教育」を意味する「education」という言葉があります。「引っ張り出す」という意味だといわれてきましたが、もう一つ「踏み込む」という意味もあります。よくよく考えたらそうですよね。踏み込まなきゃ引っ張り出せないじゃないですか。踏み込まないで何を引っ張り出そうというんですか?

声を掛けて、「うるさいな」と言う子もいるだろうし、「うん、わかったよ」と言う子もいるでしょう。あるいは、声を掛けてくれたおじさんなりおばさんなりがとても感じがよかったので、「ああ、僕一人じゃないんだな。だれかがこうやって見ててくれるんだな」と思う子もいるんだろうと思うんですね。

子どもの心、若い人たちの心の中には、「本当はこうしたいんだよ。でも恥ずかしいからできないんだ」とか「うちの親が嫌だからできないんだ」といった気持ちがあると思います。それを、声を掛けることで踏み込んでいって、そこから引っ張り出す。「さぁ、立って歩いてごらん」。これが大切なのではないでしょうか。

でも人間って誰でもテレ屋じゃないですか。子どもたちにだって「君、どうしたの」って声を掛けられない。どうです、「おばあさんもさぁ、あんたたちのころにはワルだったなぁ」って、子どもの方から踏み込める心をひらいてみては。

草柳大蔵著「続・午前8時のメッセージ99話」(2002年発行)より

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