あなたの「富士山物語」(富士山の明かり/山本由美子)

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ページID1019392  更新日 2023年1月13日

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富士山の明かり/山本由美子

ホテルから眺める富士山の素晴らしさは言葉にする術もなかった。

山の美しさを際立たせるように、背景の空は真っ青だ。

時間を忘れて、私は見惚れた。

神を、地球を、哲学を人に思わせるような姿。

この美しい山が日本にあることがうれしかった。

夜の帳が降りる。

富士山は空を覆う程、大きな黒いシルエットになった。

その巨大さが改めて神々しかった。

今宵は富士山に守られて眠りに就こう・・・。

私はカーテンを閉じず、富士のシルエットを仰ぎ見て横たわる。

おや?あれは何。

暗闇の富士山に赤い火がちらちらと見える。

眼鏡を掛けて見ると、その明かりはもっと多く、列をなして富士山を這い回っているかのよう。

一体何。

ネオンであるはずがない。

山火事か。

それにしてもこんなに遠くまで届くとは相当たくさんの明かりのはず。

しばらくして、推測が生まれた。

そうか、登山人の明かりかも。

夜を徹して人びとが富士山登頂を目指して歩き続ける。

富士の山が、信仰にも似たエネルギーを人びとに与えても無理はない。

明かりは途絶えることがなかった。

やっぱり富士山は神様だ。

日本人の心のよりどころ。

私は光の謎を解いた思いで、静かに目を閉じた。

翌日ホテルスタッフに尋ねると、推察は当たっていた。

みんな富士山がすきなんだ。

うれしくて、私は日本人が大すきになった。

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