第3回人と地域、人と社会を結びつける 「場」をまちの中につくる

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ページID1035192  更新日 2023年1月13日

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NPO法人ESUNEの天野浩史さん

こんにちは、静岡県中部地域局です。

地域活動に取組む方々にスポットを当て、地域と関わるようになったきっかけや活動内容について、中部地域局の職員がインタビューし、みなさんに情報をお届けします。

第3回となる今回は、静岡市を拠点に活動されているNPO法人ESUNE(エスネ)代表理事の天野浩史(あまのひろふみ)さんにインタビューしました。

写真:天野氏

人と地域、人と社会を結びつける 「場」をまちの中につくる

活動の始まりは2013年で、まだ静岡大学の学生の時です。大学の中で、地域とつながる場を作ろうということで、「人と地域」がつながる場、「人と社会」を捉え直し、考え直す、そのような「場」を一貫してつくっています。

2017年に法人化して、「人材育成」と「基盤整備」を2本の軸として活動しています。「人材育成」では、島田市の市民協働講座のコーディネーターや、ソーシャルな視点を学ぶ企業研修、PBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)型の大学授業運営などを行っています。

写真:エスネ


もう一つは、「基盤整備」と称したプロジェクトコーディネート(地域プロジェクトに参加する場の提供)をしています。地域のために活動したいという人がいるのに、活動している団体側がボランティアを募集していない、余裕がなくできないことがあります。私たちは、そのようなプロジェクトの発掘をして、3〜4ヶ月のプロジェクトとして設計し、募集をしてマッチングする、「ローカルプロジェクト」の「コーディネート」を行っています。「ふるさと兼業」といって、自分のスキルを高めるため、あるいは好きなまちに関わりたいなど、自分の時間と力を地方で活かす、そのような場をつくるコーディネートも行っています。

応募する方の中には、東京・名古屋から、無報酬で参加する方もおり、その方々に、やりがいやチャレンジ、あるいは経験、つながり等の「意味」を共につくれるか、試行錯誤しながら、活動しています。

参加・創造(想像)・支援を根のように地域に広げる活動!

法人の名称「ESUNE」は、アルファベットのSが「参加・創造(想像)・支援」の略、根が「根っこ」で、地域で3つのSの根が広がるイメージでつけたものです。活動の2大テーマとして、増加しつつある孤立した人たちをどうすれば解消できるのか、もう一つが、他人の困り事を自分事として関われる人を地域に増やしていけるのか。そのために、他者の話を聴く場、自分の力を誰かのためにつなぐ場など、人と人のつながりを生み、育てられる場をまちのアチコチにつくりたいと考えています。

現在、社会人から学生まで、35人ほどの人が関わってくれています。静岡県だけではなく愛知県や東京都からの参加もありますし、昨年からは学生スタッフの参加も積極的に呼びかけ、大学生が主催するプロジェクトも多く生まれてきました。一昨年からはじめて有給職員として事務局長とディレクターを採用し、ようやく組織としての基盤が整ってきたところです。

そんなメンバーのアイデアで最近始めた活動として、「日本語サロンいろり」があります。これは、コロナ禍で日本語教室が閉鎖し、孤立化が進む外国人技能実習生が、安心して日本語を使い、人と出会い、交流したり学び合う場をオンラインでできないか?という想いから始めました。意外にもアメリカからボランティア参加があるなど、週1回、日本語でおしゃべりをするだけの場ですが、そこから実際に出会い、一緒に静岡の観光地に遊びに行くという動きも見せています。

コロナの影響は、大学生を「孤立化」させてしまいました。サークルにも入れない、部活もできない、授業はオンラインで同級生とも会えない、やりたかったこともできない…そのような学生の「モヤモヤ」感をなんとかできないかという想いから、昨年から学生の声を聴いて、整理して、必要に応じてつなぐ活動を始めました。先日も、「海外留学と掛け合わせた教育プログラムをやりたい」という学生がやってきて、動機を聴いたり、「どうやったらできるのか」を一緒に考えたり、そんな小さなアクションを支える「場」をつくっています。

いわゆる社会問題をビジネスで解決するというアプローチではなく、人と人とのつながりをつくり直し、社会的なしんどさをそばにいる人がほっておかない、そんな「場をつくり、意味をつくり、人をつなぐ」ことが私たちの専門性なのかなと思います。

写真:オンライン


ここ数年で大学生のインターンシップや地域活動だけでなく、高校生の「探究学習」など若者が地域に出る機会がすごく増えています。その一方で、インターンシップやまちづくり活動に来た若者たちに、一方的な期待や評価的まなざしを与え、失敗を許容しない、そんな「ちょっと怖い大人」が増えた気がします。

企業の採用難、地域活動の担い手不足は大きな課題ですし、若者の活躍や協働に期待する気持ちもわかります。しかし、今の若者たちは、私たち大人が想像する以上に繊細で、多感で複雑な気持ちを胸に抱いているのです。インターンシップや地域活動での何気ない一言が、トゲのように刺さって抜けなくなった、そんな学生にも出会ってきました。「最近の大学生は主体性がない」という大人側の声も聞きますが、主体性を発揮できない環境を私も含め大人側がつくってしまったのではないか、と思います。若者の活躍する場が地域社会に増える今だからこそ、改めて、どういう関わり方を私たちがつくるのか、未来の子どもたち、若者たちに私たちがどんな姿を見せるのか、問われているように思います。

大正大学の研究員としても活躍中

ESUNEの活動とは別に、大正大学地域構想研究所の研究員の肩書きもいただいています。

これは、大正大学が藤枝市と協定を締結したことをきっかけに、藤枝市が学生のフィールドワークの場を提供しており、毎年、1年生、3年生約15人から20人が40日間、藤枝に住み込んで、地域について学び、プロジェクトをつくる授業を行っています。私は、このフィールドワークのコーディネーター兼教員として、プログラムの設計や関係機関との調整、学習のファシリテートをしています。このフィールドワークが終わっても、就職相談や、人生の悩みを聴くこともあります。

写真:大正大学


昨年はオンラインでしたが、シビックプライド(まちへの誇り)の醸成、防災まちづくりなど、オンラインを活用しながら彼ららしいプロジェクトにチャレンジができました。

静岡は人生の転換地

元々は、高校の物理学の先生を目指していました。地元愛知が好きで帰るつもりが、地域の大人に出会い、「静岡で何かやろう」と県内企業に就職しました。

地域に関わる仕事を通じ、志を持って地域の何かに取り組んでいる人との出会いや本業を別に持っていながら隙間時間に地域のことをする人が多い静岡は、魅力的であり、豊かなまちだと感じています。静岡のまちづくりをしている人とフェイスブックで友達になると、共通の友達がいたり、そんな手が届く規模感、人のつながりの緩やかさも静岡のおもしろいところだと思いますね。

リレーのバトンは藤枝市大慶寺の大場唯央(おおばゆいおう)さんへ

藤枝市内で、大正大学の学生を受け入れてもらう先の一つに、久遠の松がある大慶寺があります。住職の大場さんは、オンラインで「僧侶のためのファシリテーター連続講座」の企画、寺内に休憩所「一休茶房」の設置などお寺の可能性を広げただけでなく、藤枝おんぱく、蓮華寺池周辺のリノベーションなどにも携わっています。

「開発僧」による「仏教と地域活動」の意外な共通点に、乞うご期待!

このページに関するお問い合わせ

中部地域局地域課
〒426-0075 藤枝市瀬戸新屋362-1 藤枝総合庁舎2階
電話番号:054-644-9102
ファクス番号:054-645-1152
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