第24回「個性」を尊重して進む就労継続支援B型事業所 一如(いちにょ)
こんにちは。静岡県中部地域局です。
地域活動に取り組む方々や、イノベーションを起こしている企業にスポットを当て、地域と関わるようになったきっかけや活動内容について、中部地域局の職員がインタビューし、みなさんが元気になる情報をお届けします。
第24回となる今回は、牧之原市の静波海岸で障がいのある方とともに、凸凹隊(でこぼこたい)を結成し、互いの個性を尊重した運営を続ける、就労継続支援B型事業所一如(いちにょ)の尾﨑千里施設長にインタビューしました。
静波海岸の風と波の音に癒やされて
私(尾﨑施設長)は、吉田町出身ですが、縁あって10年前から静波海岸の目の前で働いています。
私自身も2人目の子どもが知的ハンデを持っていて、この子を含めた障がいのある方の成人後の生活について深く考えていました。
子育ても周囲の支えがあって、なんとか一番大変な時期を乗り越えたところで、静波海岸にあった「つなぐカフェ」を譲り受けました。この場所は、海からの風と波の音に癒やされる場所です。2年前までカフェとして営業していたころは、「つなぐカフェに来ると日頃の疲れが癒やされる」、「嫌なことを忘れる」などのお声をいただいていました。この心地よい環境の中で、今までやってきた仕事を障がいのある方と分かち合う。そんなことをしたくて、この場所に「一如」を立ち上げました。
一如の主役、凸凹隊
一如は元々仏教の用語なのですが、私たちは、「みんなおんなじちがいなし!」という意味で使っています。障がいがあっても無くてもやりたいことはやればいいし、やれることを探せばいいという思いがこもっています。
一如の主役である通所者の方々は、凸凹隊と呼んでいます。障がいのある方は、凸凹した考えや行動、言動があることが当たり前です。地域の方や、一如を訪れる方に気軽に呼んでいただけるように、凸凹隊という愛称を付けました。
凸凹隊は、それぞれの個性を大事にしています。愛知から来てくださるお客様が助言をくださったのですが、障がいのある方は得意なこととそうでないことがはっきりしています。当事業所が持っている仕事の行程を細かく分解して、それぞれの将来の夢のために必要なスキルが当てはまる仕事を、できそうなことから取り組んでもらっています。ただし、本人に無理がかからないように、そして実際に工賃を生み出すように工夫しています。
人の一番の目的は生きることです。生きるためには暮らしを営んでいかなくてはなりません。将来自立した暮らしが営めるように、凸凹隊のみなさんも働いています。
凸凹隊の仕事には、生活に役立つ経験になることも取り入れています。例えば、洗濯の仕方、洗濯物の干し方、ドライヤーの使い方などです。そうしたことも、向いている方とそうでない方がいるので、見極めながら仕事をお願いするようにしています。
凸凹隊が稼ぐ工賃は、正直、人によって大きなばらつきがあります。しかし、一如ではそれを皆で分け合っています。
また、皆勤するとがんばり手当が付くようにして、仕事を続けるインセンティブも用意しています。
お弁当作りが地域との距離を縮めます
もともとこの地域で人気だった定食屋さんが閉店し、そこの親方がご縁あって一如の職員になってくれました。元々カフェだった一如には厨房もあり、お弁当を取り扱う資格もありました。
お弁当を作って配達に出かければ、地域の方に凸凹隊のことを知ってもらい、お互いが慣れていくことができるきっかけになる!そう思ってお弁当販売を始めました。今ではリピートしてくださるお客様も増え、多いときには70個を超える注文もあります。
リピートしていただくことで、地域の方と凸凹隊の距離も縮まり、お互い慣れていくことが少しづつできてきています。
草取りから始まるバーベキュー・キャンプ場の整備
一如の敷地は、広く心地のいい空間です。この場所をきれいに保つことはなかなか大変なのですが、凸凹隊のみんなで力を合わせて草取りや松を掻く作業をしています。きれいにしたら、次は人に来ていただきたくなります。そして、せっかく来ていただくなら工賃になることをしたいと思いました。
バーベキューの準備や片付けは凸凹隊ができます。道具はある、やり方も知っている、食材の調達もできる!できることを支援員と凸凹隊が手分けをして、工賃を上げていくために取り組んでいます。
特に、草取りはみんなができる仕事です。ノルマもルールもなく、柔軟に取り組むことができます。例えば午前中に草取りをして、疲れたら午後は屋内の仕事をするなど工夫しています。
地域の活動を引き継ぐ松林の清掃
静波の毎月第一木曜日は、「松林の清掃の日」です。元々地域のお年寄りがボランティアで行っていた活動ですが、凸凹隊も一緒にやらせていただいています。
清掃活動をしていると、散歩している方に「ありがとう」と声をかけて頂いています。障がいがあってもなくても、やっていることに感謝してもらうことはうれしいことです。
お年寄りの皆様も80歳を超える方がほとんどになり、今年度でこの活動を終了するとのことなので、この事業を凸凹隊のみんなと、これからこの活動を知って協力してくださる方と一緒に続けていきたいと思っています。
今後挑戦していきたい取組
今年の4月で一如を始めて3年目に入り、「凸凹隊と働く」ことが板に付いてきました。働いて、工賃を頂いて、次に考えることはお金の使い方です。地域のお店で買い物をして、まずは消費税を払います。その積み重ねで、いつか凸凹隊も所得税の納税者になれたらいいなと思っています。
それと並行して思うことは、親亡き後の生活です。親が元気なうちは、障がいのある方の身の回りのことや、移動などを助けてあげることができますが、親が運転免許を返納したり、亡くなった後に、周りの人に助けていただきながらでも、住み慣れた「地域で暮らすこと」ができる環境を作っていきたいと考えています。具体的には、いつの日かグループホームを一如の敷地に造りたい、皆で生きる、暮らす住まいが欲しいと願っています。
牧之原市のここが好き!
山があり、川もある、自然あふれるこの街の、最大の魅力はやはり海です!
静波海岸は、全長1.3kmに渡り、美しい砂浜の海岸が続く、全国的にも有名な海水浴スポットです。100m沖まで歩いていけるほど遠浅で、さらに波も適度なため、家族連れの海水浴でも安全に楽しめます。
海からの風と、波の音は、癒やしを与えてくれます。
また、日本初の大型サーフィンプール「静波サーフスタジアムPerfectSwell」は、サーフィン初心者から上級者まで楽しむことができ、観光での賑わいも期待しています。
私は牧之原市の移住・定住サポーターも務めていますが、こうした魅力に引かれて移住者が増加し、街が活性化すれば、子どもたちへの支援の力も増すと思っています。
このページに関するお問い合わせ
中部地域局地域課
〒426-0075 藤枝市瀬戸新屋362-1 藤枝総合庁舎2階
電話番号:054-644-9102
ファクス番号:054-645-1152
chubu-chiiki@pref.shizuoka.lg.jp