あなたの「富士山物語」(カラー(空)フィルム/石間誠)

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ページID1019339  更新日 2023年1月13日

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カラー(空)フィルム/石間誠

私は、今から四十五年前、高校二年生の夏休み行事で初めて富士山に登った。実業高校生の私たちは、実習着上下に地下足袋という登山姿であった。若かったせいか周囲の目が気になり、恥ずかしい思いをしながら登山したことを思い出す。

それでも、初めての富士登山だから記念写真をたくさん撮ろうと父のカメラを借り、当時としては高価であったカラーフィルムを入れて行った。

高山に登った経験のない私にとって、高度が増すごとに展開される大パノラマは感動の連続であった。もちろん、持参したカメラで写真も撮りまくった。ご来光の瞬間や学友の姿も何枚か撮った。みんな、みんな輝いていた。

あの輝きが失せないうちに早く写真を手に入れようと、下山してから直ぐにカラーフィルムを写真店に持って行った。間もなく指定された日時がきたので、期待をこめて私は再び店を訪れた。すると、店主から「何も写っていない、フィルムが空回りしていたのでは…。」という情け容赦もない言葉が返ってきた。「まさか、そんな馬鹿なことが。」と私は呟きながらも空撮りをしていたミスにやっと気が付いた訳である。そこで、「これが本当のカラー(空)フィルムか。」と洒落てはみたものの、余りの悔しさに茫然自失してしまった。

あれから数十年が経った。あの失敗のおかげでカメラ操作にも慣れ、今では写真撮影を趣味の一つにしている。あの時、富士山頂で見たご来光の美しさは写真でこそ残せなかったが、私の脳裏には今でも鮮明に焼き付いている。苦々しくもあり楽しかった青春の思い出の一コマである。

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