あなたの「富士山物語」(三人の挑戦「富士登山」/小池邦暁)

ツイッターでツイート
フェイスブックでシェア
ラインでシェア

ページID1019345  更新日 2023年1月13日

印刷大きな文字で印刷

三人の挑戦「富士登山」/小池邦暁

一九九一年三月、東京杉並の自宅から郷里の袋井市まで、自転車の旅をした私(四十五歳)と二人の息子(中一・小六)は、次の目標を富士登山とし、八月四日昼には吉田口五合目へ、七号目の山小屋には午後四時過ぎ到着した。小屋は多くの登山者で混雑していた。

夕飯をすませるとすぐに寝床に入ったが、横になったとたん、長男が激しく咳き込んで止まらない。周囲の人にも迷惑をかけるので、起こして囲炉裏のそばに座らせた。ご主人が砂糖湯を飲ませてくれ、少し落ち着いたが横になると咳が出る。仕方なく二人で壁に寄りかかってうとうとした。

午前一時前には、頂上でご来光を迎えようとする登山者が次々と出発し始めた。子供達を起こすと「大丈夫」「行く」というので、「ヨシッ頑張ろう!」と頂上を目指し外に出た。

そこには、東京ではおよそ見られない、まさに降るような満天の星、さらには流れ星も見つけて大喜び、ご来光は九合目で迎えた。天体ショーは感動の連続だった。

鳥居まで数十メートル、もう少しで頂上というところで、今度は次男が頭が痛いと言い出した。ここで無理は出来ない、さりとてこのまますぐに下りるのも悔しい。少し休んでみようと通路をよけて三人で横になった。風もなく日も当って寒さはあまり感じない。私もぐっすり眠ってしまった。

一時間ほどで目を覚ますと、幸い次男の頭痛はすっかり取れていた。一歩一歩頂上が近付き足早になる。午前七時過ぎ、ついに頂上に立った。瞬間こみ上げるものがあり視界がぼやけたが、子ども達の満面の笑みはしっかり記憶した。

そして、三人の挑戦は翌夏の白馬三山登頂へと続いた。

このページに関するお問い合わせ

スポーツ・文化観光部文化局富士山世界遺産課
〒420-8601 静岡市葵区追手町9-6
電話番号:054-221-3746
ファクス番号:054-221-3757
sekai@pref.shizuoka.lg.jp