あなたの「富士山物語」(私たちの富士登山/山田恵利子)

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ページID1019360  更新日 2023年1月13日

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私たちの富士登山/山田恵利子

今から六年前、主人は私に「静岡に嫁に来たのだから、一緒に富士山に登ろう。」と言って、<やっぱり一度は登りたい>という、富士登山初心者向け雑誌を買ってきた。読んでいるうちに挑戦してみたくなり、雑誌を参考にしながらいろいろな準備をした。そして登山する日を、二〇〇四年七月十一日~十二日と決めた。登山ルートは富士宮口で、宿泊場所は「万年雪山荘」を予約した。
体力のない私のために、昼食後にはスタート。何度も休憩しながら、やっと八合目に着いた頃より天候が悪化。雷が鳴り始め、雹が降ってきた。途中であきらめ下山する方が多い中、リタイアする勇気もなく、ただひたすら歩いた。宿泊場所に着いた頃には、夕方五時を回っていた。持参した着替えも濡れてしまい、カレーライスを食べた後すぐに休んだが、今度は息苦しくなり軽い高山病だとわかった。携帯酸素で何とか落ち着いたが、登頂する自信がなくなった。主人だけでも御来光をと思ったが「二人でないと意味がない。」と、励ましてくれた。

少し眠ったら気分も体調も良くなったので、早朝二時半にお弁当をもらって出発した。しかし、昨晩降った雹が、積雪状態となり銀世界だった。再び予想以上の体力の消耗だったが、剣ヶ峰に何とか到着。私たち二人だけで、贅沢な御来光を拝んだ。何とも言えない最高の気分。昨日からの苦労が一瞬にして吹っ飛んだ。夢中で何枚もの写真を撮っていたが、だんだん身体の動きが鈍くなるのを感じ始めた。おそらく、昨晩から何も食べず無理をしたのが原因と思い、雪の上に腰を下ろし、冷たくなったお弁当を、動きにくい手で少しずつ食べた。暖かい飲み物が欲しかったが、持参のお茶も冷たかった。今度は、こんな状態で下山できるのか心配になってきた。ところが、三十分ほどしたら、さっき食べたお弁当がエネルギーとなり、徐々に元気が出てきた。と同時に欲も出てきて、お鉢周りも行えた。

頂上の郵便局に行った時、「貴方たちは幸せ者だよ。夏山登山で、雪山の御来光はなかなか見られないよ。」と、声を掛けてもらえた。いろいろ無理をした場面もあったが、主人と二人で頑張って登って良かったと思った。

次の年、富士山特集の雑誌に、この日の御来光の写真が掲載されていて、すごく嬉しかった。このような経験をしたことで、主人はお酒を飲むとよく人に、「一度は登った方が良い。富士山の見方が変ったよ。」と口にするようになった。

私たちの心をとりこにした富士山。いつ眺めても雄大な姿の富士山。この経験と、思い出は私たち夫婦の宝物。一生忘れない。

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