あなたの「富士山物語」(富士山へ「一、二、三、一、二」/阿部弘)

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ページID1019353  更新日 2023年1月13日

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富士山へ「一、二、三、一、二」/阿部弘

次男は生後まもなくの両足の手術で、以来矯正靴の二十四時間でした。外で走って遊べず家の中で絵本やテレビ、マンガばかりでしたが、ある日富士山の写真集を見て「このお山へ登りたいな。」とポツンと夢みたいな事を言いました。当時は転勤先の津市に居ましたが、息子の夢に「そうね、パパが静岡県へ転勤したらママも登った事がないから行こうね。」と指切りしたのです。

転勤は宇部市をへて四才になって浜松へ。誰より「ママ、富士山に行ける。」大喜びでした。神様のお力でしょうか、長男はカブスカウトの隊員でしたが、浜松第一団に来て夏の訓練は富士登山と発表されました。無理なお願いとは分かってましたが、事情を説明して隊とは別行動でと許可を頂き、登山の経験もありませんが息子の為に皆から教えて頂いて、矯正靴の上にすっぽり夫の冬の靴下をはかせ小石が入らないよう。雨具や薬も。そして登山前夜は日本ランドに泊り、翌早朝五時からバスで五合目に着きました。快晴で最高の七月二十八日でした。高山病と息子の疲れが心配で、杖に焼印が全部でなくてもすぐ戻る覚悟でした。「一、二、三」と二人で声を出して進み、「一、二」とその場で足踏み法をしながらゆっくりゆっくり進むと、御来光を拝んだ方々がいっぱい下山されてきて、息子の頭を撫でながらガンバレガンバレの声や、九州からの八十才のおばあちゃん三人隊から飴を頂いたり、山小屋ではあったかいおうどんを頂いたり、四才半の息子が自力でにとても応援して下さいました。

この調子なら山頂まで大丈夫かなと思ったのですが、八合目を過ぎた時からピカピカゴロゴロ暗い雲が下から上がってきて、雨から霰と雹に土も見えなく、私は息子をアノラックに入れて立ち尽くしていたのです。その時、暗い中から黄色っぽい明りでブルドーザーが上がって来たから、もう必死で「この子を乗せて下さい。」と声を限りに。「お母さんも乗りなさい。」と。神様のおかげで富士山頂までの息子の夢が叶い、皆様のお助けのおかげです。神主様が今年自力で登れた最年少だとお褒め下さり、濡れた服も社務所に入れて下さって、大きな火鉢で乾かしなさいとご親切に。引っこみじあんの息子にとって、夢が叶った最高な自信を皆様から頂いた夏でした。

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