人づくりちょっといい話27
人を浴びて人となる
今日は五月十三日ですが、ちょうど一ヶ月前の四月十三日に、株式会社日管の社長さんで、浜松の名経営者と言われた三輪(みわ)信一(のぶいち)さんという方が亡くなりました。八十六歳でした。浜松近辺はもちろん、日本全国でも知られている方です。というのは、「躾(しつけ)の日管」という面白い看板をビルに掲げていらっしゃって、実際に社員に対する躾をきちんとなさっていたんですね。
それは、箸の上げ下ろしや歩き方、返事の仕方といった、社会人としての躾というよりも、どうやって仕事の中で自分を生かすか、ということのための躾です。自分を生かせば、人生がそれだけ楽しくなる。三輪さんは、一貫してずっと「躾の日管」でやっていらっしゃって、大変な人格者だという印象があります。何度もお目に掛かりましたが、教えられることがたくさんありました。
三輪さんは、「この本を人に読んでもらいたい。自分だけが読んで感動したのではもったいない」とお考えになると、ご自分のポケットマネーで本を百冊も二百冊もお買いになって、方々の知人にお分けになっているんですよ。私も十冊ほど頂きました。
三輪さんが、日本生産性本部から講演を頼まれたとき、自分みたいな人間がどうして日本中の経営者に講演ができるだろうか、と思われまして、禊(みそぎ)をするつもりで、当時の山口県の長府製作所の尊敬する社長さんのところへ、浜松からわざわざ教えを請いに行かれました。その社長さんがいろいろなことを教えてくださるのですが、日常的に非常に身を慎まれる方で、会社の車に乗ってお料理屋などに行くと、「運転手さんを待たせるのはかわいそうだ。そういうことを日本中の社長がやっているけれど、運転手の身になったことがあるのだろうか?」というお話をされるんですね。
三輪さんはとても厳しい方かと思ったら、しょっちゅう人に会って、勉強していらっしゃる。そのことを「人は人を浴びて人となる」とひと言でおっしゃるんです。教育、あるいは人づくりとは、こういうことなんですね。
これからはぜひ地域社会で、あるいは家庭同士で、子どもたちになるべく人を浴びるような機会をつくってやってほしいと思うんです。三輪さんのように本をあげるということは、もらった人がその本を読むことによって、その本を書いた人の人格を浴びることになるんですね。水掛け遊びというものがありますが、人格の水掛け遊びみたいなものをしてみてはどうでしょうか
草柳大蔵著「午前8時のメッセージ99話」(H21年発行静新新書)より
このページに関するお問い合わせ
スポーツ・文化観光部総合教育局総合教育課
〒420-8601 静岡市葵区追手町9-6
電話番号:054-221-3304
ファクス番号:054-221-2905
sougouEDU@pref.shizuoka.lg.jp