人づくりちょっといい話20
人づくり推進員の報告(1)
「人づくり推進委員会」の活動状況を報告したいと思います。2年半前に静岡県で出発して、私が会長をおおせつかって、17人の専門家に集まっていただいて「教育って何だろう?」というところから始めました。そして『意味ある人をつくるために』という題の提言書を作りました。そうしたら、「『意味ある人』って何ですか?」という質問がたくさん寄せられたんですね。とにかく、この提言書を持ってどんな小さな町村にもうかがって、人づくりのためのグループをつくっていただこう、ということになりました。推進委員会というのをつくりまして、32名の方に推進委員になってもらったんです。
皆さん、本当によく回ってくださいました。その報告をうかがったんです。
委員の青島美子さんが受け持ちの地区に出向くと、参加者から「目立たない子をどうやって育てれば『意味ある人』になりますか?」また、「昔は『人の見ていない所でも善いことをしなさい』と教えられました。今ではボランティア活動をするとそれが内申点になると聞いています。自己申告の善行というのもちょっと情けない感じがしますがどうでしょうか?」という質問も出ました。
「ボランティアとは何か」―まさにこれは基本的な問題ですね。例えば、東京大学の図書館は大正12年の関東大震災の時にアメリカのロックフェラーが贈ってくれた施設です。しかし図書館のどこにも献上してくれた人の名前が出ていません。それが本当の贈り物なんですね。これは一種のキリスト教の慈善行為から出てるのですが、今はどうですか?ロータリークラブでもライオンズクラブでも、ベンチなんかを贈るとキンキラキンのマークを付けてあるでしょう?ボランティアが、内申点になってしまうんですよね。よく、昔の小説をお読みになっていると、こんな一節があるでしょう。非常に困っている人を助けてくれる。「せめてお名前だけでもお聞かせください」と言うと「いや、名乗る程の名前は持っておりません」と。ゆかしいですね。昔の美徳はどこへ行ってしまったのかというわけです。
成績についても質問が出ました。今は順番がないんですね。1番で出たとか2番で出たとか。「順番がないと、かえって目標がなくなってしまうんじゃないですか?」というわけです。一種の平等主義が、あまりにも流行し強調されたために、運動会も1等2等3等を決めないし、学校のクラスの中の成績も1番2番3番を決めない。「これは子どもの向上心に対してどういうふうに影響するでしょうか?」という質問が出るんですね。
私は「これはえらいこっちゃ」と思ったんです。結局、この青島さんの報告を聞いて、もう一回考え直してみようと思いました。もう一つ、人々に対する説得の語り口とでも言いましょうか。それを再考しなければいけませんね。
草柳大蔵著「午前8時のメッセージ99話」(H21年発行静新新書)より
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