人づくりちょっといい話3
「身体感覚」をみずみずしくする時間を
前回、周囲の大人や年長者がステージを与えることによって、子どもの可能性がいっぺんに開花するということをお話ししました。それとともに、「身体感覚」をいかにみずみずしく豊かに伸ばしていくかが人間の基本的なテーマなんだと、村瀬ありささんの作文で思い知らされました。
「森っていうのは木があるから森というだけじゃないんだ。生き物を生かしているのが森なんだ」といった認識を自分でつかまえるんですね。これを「身体感覚」といいます。体がつかまえるんですね。
人間が生きていくために一番基本的な感覚は「身体感覚」なんです。例えば、歩いているとなんとなく後ろから嫌な気配がする。振り向いてみるとすごい勢いで車が近寄って来る。だからパッと道をよける。こういう「身体感覚」、昔は「六感」なんて言いました。あるいは「統覚」と言った人もいます。感覚が一つにまとまってしまう状態ですね。
その一番基本的な「身体感覚」から、今の子どもたちは遠退いているのではないかと思います。自然と接したり、自然の営みを自分の目で見たり耳で聞いたりする、それによって蓄積される「身体感覚」から、また、「身体感覚」を与えられる場面から、引き離されているのです。
しかも、学校で教えるのは「数字感覚」であり「文字感覚」です。子どもたちは、家庭と学校と塾という三角形の中を往復するだけの毎日で、「記号感覚」、つまり数字と文字の感覚をあおられ、あるいはTVやゲームなどの人工的に作られた「人工情報感覚」にどっぷりつかっているのが現状です。
私も静岡県で人づくりについてお手伝いをさせていただいております。考えてみるとこれは実におもしろく、大変意味があり、責任の重い仕事なんですね。なぜなら、子どもたちが言語であり数字である「記号感覚」に接している時間は長いのに、「身体感覚」を身に付ける時間は実に短いからです。
本当は、人づくりの基本というのは「身体感覚」というものをいかに引き出してあげるかなんですね。「身体感覚」のみずみずしい人間内容ができることによって、その主体の中に入ってくる数字や記号も、丸暗記でなく自分で納得しながらその記号情報を読み取るようになると思うんです。
皆さん方、お母さんもお父さんも、週に1回でも2回でも暇を見つけて、そして子どもたちも(あなた自身もです)「身体感覚」をみずみずしくする時間を一日の中でおつくりになってください。お願い致します。
草柳大蔵著「午前8時のメッセージ99話」(H21年発行静新新書)より
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